ECサイトの高トラフィックのためのサバイバルガイド
オンラインの購買イベントが作り出すネットワークの高トラフィックやボトルネックへの対処法
2022年8月3日
翻訳: 島田 麻里子
この記事は米Catchpoint Systems社のブログ記事 Prime Day’s High Traffic Survival Guideの翻訳です。
Spelldataは、Catchpointの日本代理店です。
この記事は、Catchpoint Systemsの許可を得て、翻訳しています。
Amazonのプライムデー2022では、世界中の何十億人もの人たちと一緒に、何かお買い得なものを手に入れられましたか?
7月12日、13日の2日間、Amazonのオンラインショッピングイベントが開催されるのは周知の通りです。
今年の数字についてはまだ確たる統計はありませんが、Influencer Marketing Hubによると、この世界最大のオンライン小売業者は、2021年のプライムデーにおいて、2020年から7.6%増の約112億ドルという記録的な売上を上げたとのことです。
2億5,000万個以上の製品を販売し、供給不足の心配はありませんでしたが、ネットワークの帯域は別です。
トラフィックのピークが年中発生している現在、eコマースや企業のDevOpsチームは、これまで以上に、トラフィックが集中する可能性のある時期を予測し、それに備える必要があります。
プライムデーのようなオンラインイベント(言うまでもなく、世界各地で競合他社の活動が同時に行われます)は、消費者が同時にWebページに殺到し、トラフィックの急増とボトルネックの可能性を生み出すなど、ネットワークの問題が引き起こされるうってつけの環境となります。
消費者が増えることはビジネスにとって喜ばしいことですが、ネットワークの遅れは収益の損失や評判の低下につながる可能性があります。
実際、88%のユーザが、一度嫌な思いをしたサイトには戻ってこなくなると言われています。
デジタルの複雑化でサイトが高速化する一方、課題も発生している
Webサイトの可用性、到達可能性、高いパフォーマンスを確保することは、時代とともに複雑になってきています。
小売業は、表示速度や信頼性の最適化など、ある目的を達成するために膨大な数のサードパーティ・サービスに依存しています。
例えば、1つまたは複数のCDN(コンテンツデリバリーネットワーク)またはDNS(ドメインネームサーバ)を導入することは、動的なサイトアクセラレーションを実現し、フェイルオーバーを防止するための一般的な方法です。
また、ほとんどのeコマースサイトは、サイト内検索、ソーシャルプルーフ、パーソナライゼーション、配送、価格比較エンジンなど、数多くのAPIに依存しています。
APIが正しく応答しない、あるいは非常に遅いパフォーマンスは、サイトのパフォーマンスを著しく低下させ、顧客体験を台無しにしてしまいます。
ピーク時のエンド・ツー・エンドのオブザーバビリティを利用する
複雑さが増しているため、特に高トラフィックイベントに備える際には、より積極的に、エンド・ツー・エンドでのオブザーバビリティ・アプローチが必要になっています。
デジタル体験のオブザーバビリティツールをトラフィックが集中する前、集中している間、そして高トラフィックの状態が終わるまで使用することで、企業はネットワークの問題に先手を打ち、顧客の期待を上回ることができます。
DevOpsチームが事前にピーク時の装備を整え、イベント中やイベント後に何をすべきかを知るために、eBook「5 Ways to Prepare Your Webste for High Traffic」を用意しました。
ホリデーシーズンは、もはや年に一度のイベントではなくなっています。
ピーク時の計画と準備は、継続的なプロジェクトです。
今日から始めてみてはいかがでしょうか。
eコマースと企業のDevOpsチームへの提言
トラフィックの多い時間帯に備えることは、EC事業者にとっては当然のことかもしれませんが、トラフィックを誘発するイベントに対して安定した環境を整えることは、大企業にとってもメリットがあります。
WalmartやAppleのようにオンラインショップを兼ねる企業は、特にブラックフライデーやタックスフリー・ウィークエンドなどのイベント時にトラフィックがピークに達することが予想されます。
※訳注:
「タックスフリー・ウィークエンド」 100ドル以下の指定の商品の消費税が免税される週末のこと。アメリカの13の州で実施されている。
Unbounceによると、70%の消費者がWebページの表示速度がオンラインショップでの購買意欲に影響を与えることを認めています。
同様に、小売業ではないものの、メディアやエンターテインメント企業など、高いトラフィックに依存している企業にとっても、Webサイトの表示速度と信頼性は重要なポイントになります。
例えば、BBCがWebサイトの最適化テストを行ったところ、Webサイトの読み込みにかかる時間が1秒増えるごとに、10%のユーザを失うことがわかりました。
トラフィックが急増した場合、eコマースと企業では準備する手段が異なります。
eコマースでは、Webサイトの最適化やサードパーティのタグ、ホスト、リクエストの効率的な利用がより重視され、企業では、CDNやDNSなどのサードパーティ・サービスの適切な設定と構成が有効です。
eコマース側
ピーク時の交通量は通常より多いので、きちんと計画を立てておかないと損をすることになります。
逆に言えば、平均以上のトラフィックを確保できるようにWebサイトを整備すれば、その分の収穫を得ることができるのです。
- サードパーティのタグ、ホスト、Webページへのリクエストのパフォーマンスをテストしてください。
チャットbotやコメントシステムなど、不要なサードパーティアドオンを一時的に無効化します。 - アクセスが殺到することを見越して、事前にWebページのパフォーマンスを最適化・効率化します。
- モバイル向けのプランニングを行い(小売業者のモバイルアプリはAPIリクエストの接続が主)、ページとデザインを最適化して、表示速度と導線の取りやすさを向上させましょう。
企業のDevOpsチーム側
企業は、ネットワークとアプリケーションのパフォーマンスを向上させるために、マルチCDN戦略の構築に注力する必要があります。
複数のCDNをテストして活用することで、サイトユーザが最初に訪問しても最後に訪問しても、同じ品質の体験ができるようになります。
- 通常よりもWebサイトが混雑しそうな時(新しいソフトウェアをリリースする時など)には、事前に考えて、限界点を把握し、フェイルオーバー戦略を立てておきましょう。
- マルチベンダー戦略を検討してください。
例えば、マルチCDNアプローチを採用することで、パフォーマンスを最適化し、多数の顧客が同時に新しいリリースをダウンロードしようとした場合のフェイルオーバーのサポートを強化することが可能になります。 - 重要な企業発表の前には、CDNのキャッシュを事前に温めておくことで、「キャッシュミス」による遅いレスポンスを受けることになる最初のユーザへのコンテンツ配信をスピードアップさせることができます。
これにより、Webサイトを訪れる全てのユーザが同じ体験をし、同じように速いページの読み込み時間の恩恵を受けることができるのです。
WebPageTestによるサイト監査の実行
- WebPageTestを実行して、あなたのWebサイトのパフォーマンスやサイトの速度を今すぐ把握しましょう。
速いか、使いやすいか、耐久性があるか等です。 - Webサイトのパフォーマンスや速度を改善するための領域を見つけ、トラフィックが多い時期にパフォーマンスが低下する前に、最適化の提案(HTML、画像レンダリング、サードパーティタグ)を得ることができます。
- 変更を実施する前に、Webサイトの読み込みがどれだけ速くなるかをテストしてください。
WebPageTestは、全てのユーザのテスト結果を分析し、No-Code Experimentsを実行するか、または自分で提案を適用することにより、Webサイトを改善する機会を提供します。
デジタル体験・オブザーバビリティで一歩先へ
アーキテクチャの発展はエンドユーザ体験を向上させますが、それにはコストがかかります。
配信チェーンのレイヤーが増えるたびに複雑さが増し、可視性のギャップが生じ、インフラの健全性がエンドユーザ体験にどのような影響を与えているかを理解するDevOpsチームの能力が低下します。
このため、基盤となるデジタルインフラに障害が発生すると、ITチームは問題の根本的な原因を特定するために奔走することになります。
デジタル体験のオブザーバビリティは、これらのギャップを可視化し、トラブルシューティングを迅速に行い、解決までの平均時間を短縮することを可能にします。
デジタル体験・オブザーバビリティを導入することで、最も必要なときに最適なWebサイトのパフォーマンス、可用性、到達可能性を維持することができます。