
高速かつ激しく:デジタル時代のパフォーマンスの重要性
現代において「遅いことは新たなダウン」である
2025年3月14日
著者: Howard Beader
翻訳: 永 香奈子
この記事は米Catchpoint Systems社のブログ記事「Fast and furious: The importance of performance in the digital age」の翻訳です。
Spelldataは、Catchpointの日本代理店です。
この記事は、Catchpoint Systemsの許可を得て、翻訳しています。
私は長年テック業界に身を置いてきましたが、ユーザの期待の進化と、企業がデジタルの世界に適応してきた様子を見てきました。
今日特に印象的なのは、すべてが非常に高速でなければならないという点です。
かつては、稼働時間(アップタイム)だけがサービス成功の鍵とされていた時代もありました。
しかし現在では、単に「稼働している」だけでは不十分で、常に高速で、シームレスで、信頼性が高い必要があります。
初期の頃は、パフォーマンスの遅さは単なる不便さとみなされていました。
私たちはそれに対応し、何かを調整して、業務を続けていました。
しかし今ではどうでしょうか?
遅いパフォーマンスは、それ自体がサービスの失敗と見なされており、完全な停止と同等、あるいはそれ以上に有害とされています。
そしてこれは、もはや単なる感覚ではありません。
SREレポート2025が、この考え方の変化を正式に裏付けており、パフォーマンスの低下がダウンタイムと同じくらい深刻なものと見なされていることを強調しています。
ここで重要な問いが浮かび上がります。
企業はこの新しい現実にどのように対応すべきでしょうか?
この意識の変化がどれほど広範囲に及んでいるのか、そしてそれが企業にとって何を意味するのかを示す調査結果を見ていきましょう。
なぜパフォーマンス重視へとシフトしているのでしょうか?
SREレポートによると、「遅いことは新たなダウンである」という意見に53%の組織が同意しています。
このことが業界全体に与える意味は明確です。
信頼性とは、もはや単なる稼働時間(アップタイム)の問題ではなく、常に高速な体験を提供することなのです。

実のところ、これは驚くべきことではありません。
私たち消費者は、オンラインでの遅いパフォーマンスをほとんど我慢しようとしません。
バッファリングする動画、動作の遅いアプリ、なかなか読み込まれないWebサイトを待ち続けることはありません。
しかし、企業がデジタルファーストのソリューションへと移行する中で、この「せっかちさ」が単なる小さな不便ではなく、ビジネスの収益にとって深刻なリスクであることを認識する必要があります。
以下は、サービスの遅延が完全なダウンと同じくらい有害になり得る主な理由です。
- 1.ユーザのフラストレーション
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パフォーマンスが遅いと、ユーザのフラストレーションを引き起こします。
調査によると、読み込みに3秒以上かかるWebサイトは、40%のユーザが離脱し、モバイルデバイスで閲覧している場合は、その割合が53%に上昇します。
ページの読み込み時間が1秒から10秒になると、モバイルユーザの離脱率は123%も増加します。
そしてそれは、次に挙げるさらなる悪影響へとつながっていくのです。 - 2.収益の損失
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Eコマースプラットフォームにとっては、ページの読み込み時間のわずかな遅延でも、重大な財務的影響をもたらす可能性があります。
ある調査では、ページの読み込みが1秒遅れるだけで、コンバージョン率が7%減少することが明らかになっています。 - 3.ブランドの評判
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不満の残る訪問体験をしたオンラインショッピング利用者の79%は、同じWebサイトで再び購入する可能性が低くなります。
ユーザはそのフラストレーションを、SNSやレビューサイトで発信するかもしれません。
それが潜在的な顧客に影響を与え、ブランドとの関わりを避けさせる要因となります。 - 4.運用コスト
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パフォーマンスの遅さは、顧客への影響にとどまらず、運用コストの増加も招きます。
86%の企業が、1時間のダウンタイムで30万ドル以上の損失が発生すると答えており、さらに44%の企業では、その損失が1時間あたり100万ドルを超えると報告しています。
カスタマーサポートチームには苦情が多く寄せられるようになり、問題解決のために追加の人員やリソースが必要になります。

ケーススタディ:遅いパフォーマンスが現実に及ぼす影響
ユーザ体験のフラストレーションがどれほど大きな影響を及ぼすかを象徴する事例があるとすれば、それはAmazonが2022年に起こした2日間にわたる検索不具合です。
このエラーは22時間にわたって断続的に続き、AmazonのデスクトップおよびモバイルのWebサイトで商品を検索しようとした世界中のユーザに影響を与えました。
シンセティックデータによると、その期間中、世界中のユーザのおよそ20%が影響を受けていたとされています。

一部のユーザにとっては、Amazonの検索機能が22時間まるごと完全に使えない状態でした。
商品を検索しようとすると、エラーメッセージが表示されたのです。
このインシデントによって、Amazonの全世界ユーザの5分の1に影響が及んだことを考えると、同社が被った収益損失は想像に難くありません。
ここで重要なのは、これは完全なダウンタイムではなかったという点です。
サービス全体が停止していたわけではありませんが、それでもパフォーマンスの劣化がAmazonのビジネスに深刻な影響を与えたのです。
この事例は、サービスが完全に利用不能でなくても、パフォーマンスを監視することの重要性を示す明確な例です。
なぜSLOとXLOを追跡する必要があるのでしょうか?
SREコミュニティでは、パフォーマンスの低下がダウンタイムと同等に有害であることが既に認識されています。
そのため、組織はユーザの高い期待に応えるべく、サービスの品質を積極的に維持する必要があります。
レポートによると、44%がパフォーマンスをサービスレベル目標(SLO)に基づいて追跡すべきだと考えており、35%は、それをシステム全体の健全性を測る指標として捉えるべきだと答えています。
SLOやエクスペリエンスレベル目標(XLO)は、単なるバズワードではありません。
これらは、パフォーマンス指標が実際の顧客の期待と一致するようにするための指針なのです。

40%の企業が、今後12か月以内にSLOおよびXLOの導入を優先事項としています。
これらのパフォーマンス指標の追跡は、もはや単なる稼働時間の測定にとどまりません。
それは、サービスがリアルタイムで進化するユーザの期待に応えているかどうかを確認することに関わるのです。
ここで重要な役割を果たすのが、バーンダウンチャートです。
バーンダウンチャートは、設定された目標に対するパフォーマンスの進捗を追跡し、時間の経過とともに「パフォーマンス予算」がどれだけ残っているかを示してくれます。

パフォーマンスが低下し始めたとき、バーンダウンチャートはそれを早期に発見するのに役立ち、ユーザに影響が及ぶ前に是正措置を講じることが可能になります。
このようにして、バーンダウンチャートはサービスの健全性を明確に把握するための手段を提供してくれます。
インターネット・パフォーマンス・モニタリングで遅延パフォーマンスに対処する
先ほど触れたAmazonのパフォーマンス劣化の問題も、インターネット・パフォーマンス・モニタリング(IPM)ソリューションがあれば、はるかに迅速に解決できた可能性があります。
実際、CatchpointのIPMプラットフォームは、インターネットスタックのどの層が問題の原因であるかをリアルタイムで正確に特定することができました。
IPMを導入することで、組織はインターネットスタック全体を可視化できるようになります。
これにより、問題を早期に検知し、その根本原因を特定し、ユーザに悪影響が及ぶ前に解決することが可能になります。
以下は、IPMが役立つ主な方法です。
- 1.プロアクティブモニタリング
- デジタルインフラをリアルタイムで監視し、問題が深刻化する前に発見・修正することで、シームレスなパフォーマンスを実現します。
- 2.根本原因分析
- DNSの設定ミスやネットワークの混雑など、問題の原因を迅速に特定し、迅速な解決を可能にします。
- 3.パフォーマンス最適化
- パフォーマンスデータを分析し、インフラの高速化や信頼性向上のための改善提案を行うことで、最適な環境を実現します。
- 4.ユーザ体験の監視
- エンドユーザの視点からデジタルサービスのパフォーマンスを測定し、ユーザ満足度に影響を与えるボトルネックを特定・対応します。
- 5.インシデント管理
- アラートやインシデントチケットを自動で発行し、迅速な対応とダウンタイムの最小化を実現します。
- 6.SLO/XLOの監視
- SLOおよびXLOを追跡し、パフォーマンスがユーザの期待や組織の目標に合致しているかを確認します。
AppAssureの導入を始めるには
企業は、遅延パフォーマンスやマイクロアウトージ(短時間の断続的障害)といった課題に対応するために、包括的なIPMクイックスタートパッケージであるAppAssureを活用することができます。
以下は、その導入手順です。
- 1.現状を評価する
- 既存のモニタリングおよび可観測性の運用を評価し、ギャップや改善が必要な領域を特定します。
- 2.目標と主な成果(OKR)を定義する
- パフォーマンスに関する目標を明確に伝達し、チームの取り組みをビジネス目標と一致させます。
- 3.AppAssureを導入する
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主要なアプリケーションやサービスのパフォーマンスを監視・最適化するためにAppAssureを展開します。
高度な分析機能を活用して、実行可能なインサイトを得ます。 - 4.トレーニングに投資する
- チームがAppAssureやその他の新しい技術を最大限に活用できるよう、技術トレーニングを提供します。
- 5.レジリエンス文化を醸成する
- 組織内で透明性と協力を促進し、パフォーマンスの課題に対応して信頼性を向上させます。
これらのステップを踏むことで、IPMの力を活用し、より高い信頼性、レジリエンス、そして顧客満足を実現することができます。
忘れてはならないのは、現代において「遅いことは新たなダウン」であるということです。
適切なツールと運用体制を整えることで、サービスが常に最高のパフォーマンスを維持できるようになります。
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