「SREレポート2023」で私が最も驚いた発見
レポート結果からわかったSREたちの認識のギャップ
2022年12月1日
翻訳: 島田 麻里子
この記事は米Catchpoint Systems社のブログ記事 My Most Surprising Discoveries from The SRE Report 2023の翻訳です。
Spelldataは、Catchpointの日本代理店です。
この記事は、Catchpoint Systemsの許可を得て、翻訳しています。
私、Leo Vasiliouは、過去3年間SREレポートの執筆を担当する栄誉に預かりました。
2023年版では、Anna Jones氏、Kurt Andersen氏、Steve McGhee氏といった素晴らしい人たちとの共同作業も含まれています。
SREレポート2023のダウンロードはこちらから(登録不要)
レポートを発表する際には、いつも 「最も驚いたことは何ですか?」と聞かれます。
そして、例年なら考え込んでしまうのですが、2023年のレポートから最も驚いたことは、即座に判明しました
SREレポート2023で最も驚いたのは、最初のベータテストの参加者が、自分たちが抱えているバイアス(偏見)や見解を無意識に擁護したことです。
レポート史上初めて、特定の機会や課題に関する質問に対して、役割やランク(個人事業主と経営幹部など)がどのように異なる回答をしているかを深く掘り下げました。
今、私たちは、いくつかの解答群にギャップや差分があったことに驚いているわけではありません。
しかし、この最初の発見がもたらした道筋には驚かされました。
「Artificial Intelligence for IT Operations (AIOps)から受け取った価値について評価ください」
説明のために、レポートが調査したトピックの一つを考えてみましょう。
AIOpsです。
「Artificial Intelligence for IT Operations (AIOps)から受け取った価値について評価ください」と直接お聞きしました。
その答えの集約だけでも、ある種の感動を呼び起こしました。
アンケートの回答数は550件を超えました。
集計結果は上記の通りです。
(注:集計結果には少し驚きましたが、これは後ろめたいことに、これから述べるバイアスの問題の一部なのです)
「あなたの役割に最も近いのはどれですか?」
最も大きな驚きがあったのは、他のアンケートの質問でデータを分類したときです。
「あなたの役割に最も近いのはどれですか?」
ちょっと待って。どういうこと?
このように、AIOpsが組織に提供できる潜在的な価値にはギャップがあることがお分かりいただけると思います。
しかし、もっと興味深いのは、一般的な傾向の傾き(カテゴリーが左から右にシフトするにつれて)が、まったく異なる方向に向かっていることです!
(注:「Unsure…わからない」という回答は線形トレンドに含まれません)
今年のレポート最大のサプライズは……
さて、ここで今年最大のサプライズ、サプライズから生まれるサプライズを紹介します。
このデータやその他のデータを、最初のベータテストの回答者やフィードバックする人に見せたところ、誰もが最初にしたことは、自分のバイアスや視点を無意識に擁護し始めることでした。
一方では「彼ら(訳注・自分の役割と異なる立場の人たち)は正しい実装の仕方を理解していない」といった声も聞かれました。
そのまた一方で「正しいデータの取り込みのために、組織にまたがって活動することの難しさを理解してもらえない」という声も聞かれました。
このような状況に対して「どうすればいいのか」「この認識のギャップを埋めるために、組織の様々な部門はどのように動いているのか」という質問をし始めてから、最初の反応を乗り越えることができるようになったのです。
このようなリサーチ論文の美しいエッセンスのひとつは、様々な読者がデータを見て、自分なりの、時には書かれたものとは異なる結論を導き出すことができることです。
先ほどベータテストの回答者に初期データを見せたときに話したように、無意識な反応もあることでしょう。
しかし、このデータが、特にエグゼクティブとの間で、より新しく、より良い、あるいはよりしなやかな会話を刺激し、可能にすることを心から願っています。
組織構造を超えた新しい、より良い、よりしなやかな会話をする
よりしなやかな会話とはどのようなものでしょうか?
それは……
- バイアスが取り除かれていること
- 安全な環境を確保すること
- 能力について話し合うことでギャップを埋めること
まず、バイアスを取り除くことから始めます。
例えば、確証バイアスは、新しい証拠を自分の既存の信念や理論の確認として解釈する傾向のことです。
個人的な経験を元に話すと、確証バイアスはあまり広がらない可能性があります。
その場合でも、以前の経験が異なる次元で行われた可能性があるため、希望的観測や誤った楽観主義が意図せずに注入される可能性があります。
2つ目は、会話の安全性を確保することです。
矛盾や相反する意見を伝えても、発話者が罰せられることのないようにすること。
権力階級の枠を超えての会話は、「ペットプロジェクト(長年暖めてきた企画)」についての悪い知らせによって自分のキャリアをリスクに晒す可能性がある「力無き」人にとっては、危険に満ちたものになりうることを認識するのが重要です。
会話によって心理的な地雷を取り除き、高い信頼性を育み、理由を理解することによって恐怖心を軽減し、約束を守り、そして責任を果たすことで形成される「しなやかな会話」のアプローチについて検討してください。
全体として、コミュニケーションとフィードバックのループを再評価する場合には、オープンで、誠実で、透明性のある公正な文化を確保する必要があります。
最後に、能力について説明します。
能力とは「スピードとフィード(速さと供給)」 ― つまり一方の端から他方の端にあるポジティブなビジネス成果へのゲートウェイであるからです。
経営者が「ビジネス価値を示す必要がある」と言っても、それは極悪非道なことで、信頼性専門家がどのスピードとフィードが重要かを知る助けには(おそらく)ならないでしょう。
しかし、逆に、どんなに素晴らしいコードに夢中になったところで、それが新しい企業の獲得や既存顧客の維持にどのように役立つかを、経営者が理解する助けには(おそらく)ならないでしょう。
例えば「アプリケーションやインターネットスタックのコンポーネントを変更する際に、ユーザ体験を阻害しないような機能をどのように確保するか」という会話について考えてみましょう。
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