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ドバイ

デジタル時代の顧客体験の落とし穴を乗り越える: 湾岸物語

2024年7月11日
著者: Wasil Banday
翻訳: 竹洞 陽一郎

この記事は米Catchpoint Systems社のブログ記事「A gulf tale: Navigating the potholes of customer experience in the digital era」の翻訳です。
Spelldataは、Catchpointの日本代理店です。
この記事は、Catchpoint Systemsの許可を得て、翻訳しています。


デジタル時代における技術的進歩をどのように定義すべきでしょうか?
それは単にガジェットや小道具の普及に過ぎないのでしょうか?
それとも私たちのデジタル体験のシームレスさにあるのでしょうか?

最近、私は湾岸協力会議(GCC: Gulf Cooperation Council)の主要貿易拠点であり、「未来の都市」として称えられるドバイに引っ越しました。
しかし、ドバイの技術革新はそのデジタルサービスベンダーの耐久力にも及んでいるのでしょうか?
一般的なアプリのユーザ体験は、この都市の印象的なインフラや野心的な技術イニシアチブと比較してどうなのでしょうか?

私はこの都市の進歩に驚きながら、そのデジタルサービスベンダーが本当に都市の未来的な評判に追いついているのか疑問に思います。

ドバイでのデジタル体験の浮き沈み

ドバイに引っ越したとき、私はそのデジタル洗練度と、テクノロジーが生活のあらゆる側面に統合されている様子にすぐに魅了されました。
ここでは、非常に高度なテクノロジーによって生活が調整されており、たとえば、そびえ立つブルジュ・ハリファは点滅するディスプレイで生き生きとし、カルフールの店舗での買い物は物理的とデジタルのシームレスな融合です。
一方で、CAFUのようなサービスは、私たちが家で夕食を楽しんでいる間に車に燃料を補給してくれます。

私のデジタル体験を振り返ると、インターネットのレジリエンスがユーザ体験を形作る重要性を浮き彫りにする二つの出来事が思い出されます。
両方の出来事は特定のベンダーに関連していました。
一つは回避できましたが、もう一つは待つか次のベンダーに移るしかありませんでした。
これらの経験は、最も進んだ都市であってもユーザ体験を無視できないことを強調しています。

インシデント1: 未解決の課題

有名な自動車学校のアプリで運転教習を予約しようとしたとき、予想外の障害に遭遇しました。
スマートフォンだけでなく、ノートパソコンのブラウザを使っても遅延が発生し、何度も更新を試みましたが、サイトは完全に応答しませんでした。

一般の人なら、そこで話は終わりでしょう。
しかし、私は世界初のインターネットパフォーマンスモニタリングプラットフォームであるCatchpointで働いているという利点があります。
当然、私は問題を内部テストで調査しました。
その結果、懸念すべきことが明らかになりました。

ドバイでの自動車学校のアプリのパフォーマンスデータ。ドバイだけ12時間近く落ちている
ドバイでの自動車学校のアプリのルーティングデータ
ドバイでの自動車学校のアプリの経路上のレイテンシ

多くのECN変更が私の注意を引きましたが、これはネットワーク内の潜在的な混雑を示唆しています。
ECN(明示的輻輳通知)は、インターネット上の信号機のように機能し、データの流れを監視して詰まりを防ぎます。
一貫した混雑は、遅延の増加、速度の低下、またはパケットロスを引き起こし、アプリやWebサイトのパフォーマンスの低下につながります。

極端な場合、このような混雑は、ネットワークが意図的に過負荷にされるDoS攻撃の兆候である可能性もあります。
通常、Webサイトはこれらの問題を管理するためにCDN(コンテンツデリバリーネットワーク)やWAF(Webアプリケーションファイアウォール)を使用します。
この場合、CDNがなかったため、コンテンツは直接イギリスから提供され、ネットワークの負担が増していました。

アプリが機能せず、Webサイトがダウンしていて運転教習の予約ができなかったことは、単なる煩わしさを超えていました。
それは、日常のタスクに依存するオンラインのやり取りがどれほど信頼性が高く、使いやすいものであるべきかを示す明確な信号でした。
この経験は、すべてがつながっている世界において、シームレスなデジタルサービスの必要性を痛感させるものでした。

インシデント2: 障害の克服

クリケットワールドカップ2023は、私が非常に楽しみにしていたイベントでした。
ファンとして、イギリスに本拠を置くスタートアップのストリーミングサービスに加入しました。
しかし、私の高速インターネット接続にもかかわらず、観戦中の試合が常にバッファリングされ、興奮はフラストレーションに変わりました。

サービスプロバイダーに連絡すると、ストリーミングの解像度を変更したり、アプリ内でCDNの国を手動で選択したりするなどのトラブルシューティング手順が提示されました。
デフォルトでは「自動CDN」に設定されており、理論上はストリーミング品質が自動的に最適化されるはずでしたが、実際にはそうではありませんでした。

この問題を解決するために、私は各地域のマニフェストファイルを調べ、自宅に設置しているオンプレミスノードからテストを実行しました。
テストにより、シンガポール地域がドバイへの最も信頼性の高い接続を提供していることがすぐに判明しましたが、これはアプリの「自動CDN」機能には反映されていませんでした。
私は手動でシンガポールのパスに切り替え、バッファリングが解消され、クリケットの試合を楽しむことができました。
これは小さな勝利でした。

ドバイにおける各地域のCDNのマニフェストファイルのレスポンスタイム
ドバイにおける各地域のCDNのマニフェストファイルのレスポンスタイムの一覧

しかし、その解決策は完璧ではありませんでした。
次の試合では、シンガポール経由の接続が悪化し、ヨーロッパのサーバに切り替えました。
それ以降、私はシンガポールとヨーロッパのサーバという二つの信頼できるオプションを持ち、ストリーミングの問題を避けるために必要に応じて交互に切り替えました。
理想的には、宣伝されていた「自動CDN」機能がこれらの切り替えをバックグラウンドでシームレスに管理してくれるはずでしたが、実際には私が手動で行う必要がありました。

GCCにおけるインターネットレジリエンス:成功の新たな基準

GCCにおいてデジタルサービスの信頼性の必要性がこれまで以上に顕著になっています。
このダイナミックな環境でビジネスを展開する企業にとって、課題は明確です。
適応するか、そうでなければ競合他社に圧倒されるかです。
GCCの多様化とテクノロジー中心の経済への推進は、企業がますます目の肥えた顧客層に響くサービスと体験を構築することを意味します。

選択肢が無数にあり、ユーザの忍耐力が薄いこの時代では、たった一つの不具合が顧客を競合他社へと導く可能性があります。
IPMを優先し、Catchpointのようなツールを活用することで、企業はパフォーマンスの問題に事前に対処し、ユーザの満足度を高め、デジタル市場での競争力を維持できます。
大規模な顧客ベースに影響が出てから急いで対策を講じるのではなく、Catchpoint IPMはインターネットスタック全体をプロアクティブに監視し、レジリエンスを確保します。

GCCのデジタルサービスベンダーにとって、単にサービスを提供するだけでなく、デジタルに精通した消費者の洗練された要求に合致する体験を創造することが不可欠になっています。
このようなユーザ体験とレジリエンスへのコミットメントは、もはや単なる「あると良いもの」ではなく、デジタル時代における永続的な成功のための基盤となっています。