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世界的なECNブリーチングレート

インターネットはL4Sに対応しているか?

2024年9月6日
著者: Sergey Katsev, Alessandro Improta , Luca Sani, Anna Jones
翻訳: 逆井 晶子

この記事は米Catchpoint Systems社のブログ記事「Is the Internet ready for L4S?」の翻訳です。
Spelldataは、Catchpointの日本代理店です。
この記事は、Catchpoint Systemsの許可を得て、翻訳しています。


Catchpointは、グローバルなExplicit Congestion Notification(ECN)ブリーチングレート測定キャンペーンの結果を共有できることを嬉しく思います。
このキャンペーンでは、Catchpointの視点から、世界的なECNブリーチングの状態を調査しました。

ISP、通信事業者、ストリーミングサービスなど、ISPに依存するすべての人々にとって、この情報は、ネットワークまたは上流のネットワークでECNブリーチングが発生しているかどうかを判断するのに役立ちます。

ぜひ、全データセットをご覧ください。

Catchpointによる世界的なECNブリーチングレート

国別およびISP別のECNブリーチングに関する調査結果は、Catchpointの強化されたトレースルートPietrasanta Tracerouteを使用し、世界80カ国以上にある500以上のノードからデータを収集することで得られました。

Catchpointの業界をリードするグローバルノードネットワークでトレースルートを実行することにより、ECNマークされたトラフィックを通過する際に問題が発生しているISP、国、または特定の都市を特定することができます。
結果は、Catchpoint の独自の視点(そしてこのような研究のいずれにも共通する部分的な視点)から見たグローバルな ECN ブリーチングの状況を示しています。
これは、私たちの知る限り、この種の測定キャンペーンの一つとしては初めての試みです。

L4Sはインターネットを高速化する…

ECNは、ネットワークが低遅延、低損失、スケーラブルなスループット(L4S)テクノロジーにに対応する上で重要な役割を果たします。

新しいインターネット標準であるL4Sは、2023年1月に最終化され、発表されました。
L4Sは、遅延フィードバックを短縮することで、インターネットを高速化することを目指しています。
混雑が始まると、L4Sによりデバイスはほぼ瞬時に混雑を検知し、解決を開始することができます。

VR、マルチプレイヤーゲーム、ストリーミングなど、超低遅延が求められるユースケースにおいて、L4Sは大きな影響を与えるでしょう。
Apple、Google、Comcast、Nokia、Deutsche Telekomなど多くの大手企業がその実装に関心を示しています。

…ECNのブリーチがなければ

ECNのブリーチが見つかった場合、L4SなどのECN上に構築された混雑検知の方法は機能しなくなります。
新しいプロトコルへの関心が高まっていることから、Catchpointは、ECNの監視と定期的な評価をサポートしており、このような測定キャンペーンを通じて監視を行っています。

最新の調査結果

この調査結果はもともと、RIPE 88での発表に向けて準備されたものです。
多くの方々からさらに詳しい情報を求められ、ここで追加の詳細を提供することが、関係者や広範なコミュニティにとって有益であることを願っています。

RIPEに向けて準備された測定セット(2024年5月2日・3日)では、全世界で33万回以上のトレースルートを実行し、そのうち42,000例のECNブリーチングを確認しました。
これは、全体の12%にあたり、広範囲で発生している問題であることが示されています。
ECNブリーチングは、世界中で発生しています。

2024年5月3日時点でのCatchpointのECNブリーチング測定キャンペーンの結果
2024年5月3日時点でのCatchpointのECNブリーチング測定キャンペーンの結果

特定の地域における観測点の位置や数が、表示される割合に大きく影響します。
観測点が少ない場合、トレースルートは同じISPを通過する可能性が高く、これがECNブリーチングを示すかどうかに影響を与えます。
特にオセアニアとヨーロッパでは、VocusとTeliaという2つの主要ISPが大部分のECNブリーチングを引き起こしています。

ECN & L4Sに関するFAQ

明示的輻輳通知(ECN)とは?
Explicit Congestion Notification(ECN)は、IPスタック上に存在するメカニズムで、ネットワークがエンドポイントに混雑を「予見」させる手助けをします。
その概念はシンプルです。
ほぼ混雑状態にあるネットワーク機器(例えば中間ルータ)が「もうすぐ混雑しそうです!データ送信を少し緩めてもらえませんか?さもないと、パケットを失い始めるかもしれません...」とエンドポイントに伝えることで、パケットロスを回避できるという仕組みです。
ECNブリーチングとは?
ECNブリーチングとは、ソースとエンドポイントの間のどこかにあるネットワークデバイスがECNフラグをクリアまたは「ブリーチ」する現象です。
ECNの効果を失わせるには、たった一度のブリーチングで十分です。
なぜなら、ソースとエンドポイントの間のどのネットワークデバイスがECNビットをクリアしても、送信者と受信者は差し迫った混雑についての通知を受け取ることができなくなるからです。
コンテンツへの到達には、トランジットプロバイダやピアリングを経由する必要があるため、ブリーチングが発生しているかどうかを確認し、発生している場合はそれを排除することが重要です。
なぜECNはL4Sにとって重要なのですか?
ECNとL4Sは、クライアントとサーバだけでなく、ネットワーク経路上のすべてのデバイスでサポートされる必要があります。
ECNビットがブリーチングされると、送信者と受信者は混雑についての通知を受け取れなくなるため、ECNの利点は失われます。
私たちの測定では、ECNブリーチングがどの頻度で発生し、ネットワークのどこで発生しているかを調査しています。
なぜECNとL4Sが突然話題になっているのですか?

EなぜECNとL4Sが突然ニュースになっているのでしょうか?
ECNは以前から存在していましたが、データの増加と特にストリーミングデータに対する高いユーザーエクスペリエンスの要求に伴い、ECNはL4Sの成功に不可欠であり、世界の大手テクノロジー企業による大規模な投資が行われています。

L4Sは、パケットロスを減らし、ひいては再送信による遅延を減らし、可能な限り応答性の高いサービスを提供することを目指しています。
最近では、多くの大手企業の動きがあり、新しいプロトコルの導入を後押ししています。

グローバルネットワークの強化に向けた協力

私たちが共有するデータは、特定の企業や個人を批判するためのものではなく、グローバルネットワークを強化するための集団的な行動を促すための具体的な洞察を提供することを目的としています。

ぜひ、全データセットをご覧ください。