SpeedData

デルタ航空のウェブサイトのパフォーマンス低下

デルタ航空のウェブサイトのパフォーマンス低下は、CrowdStrike以前に問題の兆候を示していたのか?

2025年2月17日
著者: Denton Chikura
翻訳: 逆井 晶子

この記事は米Catchpoint Systems社のブログ記事「Did Delta's slow web performance signal trouble before CrowdStrike?」の翻訳です。
Spelldataは、Catchpointの日本代理店です。
この記事は、Catchpoint Systemsの許可を得て、翻訳しています。


CrowdStrikeのシステム障害は、特に基盤が脆弱な場合、いかに迅速にドミノ倒しが起こりうるかを改めて認識させました。
デルタ航空は、競合他社よりも大きな打撃を受けました。
ユナイテッド航空とアメリカン航空は数日以内に復旧することができたのに対し、デルタ航空は継続的な苦境に直面し、5日間で7,000便の欠航につながりました。

CEOのEd Bastian氏は、この影響で同社が5億ドルの損失を被ったと推定しています。
ユナイテッド航空が少数の便のキャンセルで済んだ一方、デルタ航空は復旧に時間がかかりました。
その結果、2024年第3四半期の利益は26%減少し、9億7,100万ドルとなりました。

前年の13億1,000万ドルから大幅に減少しています。
デルタ航空は、7月の障害に対する補償を求めている状況です。
これらの数字は、デルタ航空の復旧の遅れが財務に与えた影響を明確に示しています。
では、なぜデルタ航空はこれほど脆弱だったのでしょうか?

Microsoftによれば、その答えはインフラストラクチャにある可能性があります。
Microsoftは、進行中の議論でデルタ航空のIT環境の遅れを指摘しています。
「競合他社とは異なり、デルタ航空はITインフラを近代化していなかったようだ」と、Microsoftの弁護士であるMark Cheffo氏は指摘しました。
これは、デルタ航空の苦境は本当にCrowdStrikeから始まったのか、それともそれ以前から問題があったのか、という疑問を投げかけています。

根本的な問題は、デルタ航空のIT投資不足にあるのかもしれません。
十分なリソースを持ち、システムの近代化やレガシーツール(SiteScopeなど)の廃止、セキュリティ強化に取り組む必要がないCIOなど存在しません。

このブログは、デルタ航空のIT部門を非難するものではなく、責任を追及することを目的とするものでもありません。
むしろ、デルタ航空を、大規模かつ複雑な組織の一例として取り上げ、IT投資の強化が将来に向けて必要である可能性を考察するものです。
この関連性は、CrowdStrikeの障害が発生する前に発表されたAirline Website Performance Benchmark Reportを再検討した際に明らかになりました。
同レポートでは、業界標準やお客様の期待に対するデルタ航空の著しい欠陥が指摘されています。

遅いウェブサイトパフォーマンス:より深い問題の兆候

Catchpointは長年にわたり、ウェブパフォーマンスのベンチマークレポートを実施してきました。
多くの場合、これらはお客様向けの限定レポートや社内向けの分析として作成されています。
レポートの目的については、次のように述べられています。

私たちの目的は、サイト速度の速い・遅いでブランドを評価したり非難したりすることではありません。
顧客体験を分析し、改善すべき点を特定し、ベストプラクティスの議論を進めることです。

2024年7月に発表されたベンチマークレポートでは、デルタ航空のウェブサイトが競合他社に比べて劣っていることが明らかになりました。
特に「ページ読み込み時間」において、分析対象となった航空会社の中でデルタ航空は最も遅い結果となりました。
一般的に、推奨されるページ読み込み時間は5秒未満ですが、デルタ航空のサイトは7秒以上かかっていました。

「ページ読み込み時間」の遅い航空会社トップ10
「ページ読み込み時間」の遅い航空会社トップ10

あなたは「それがどう関係するのか?」、「ページの読み込みが遅いことは、どれほど深刻な問題なのか?」と思うかもしれません。

ページ読み込み時間の重要性

「ページ読み込み時間」とは、ページが画面に表示されるまでの平均時間です
この指標は、ユーザがページを開いてから、すべてのコンテンツが受信・表示されるまでの時間を測定します。
単なる一つの数値ではなく、リクエスト数、ダウンロードされるデータ量、DNSの品質、サードパーティリクエストの影響など、さまざまな要因が関係しています。
つまり、ウェブサイトのパフォーマンスを測る上で重要な指標となります。

読み込み時間の遅さは、技術的な問題にとどまらず、ビジネスにも影響を及ぼします。
表示が遅れると、ユーザがサイトで購入する確率が下がることはよく知られています。
研究によると、読み込みに3秒以上かかるウェブサイトでは、訪問者の40%がサイトを離れるとされています。

さらに、モバイル端末で閲覧している場合、この割合は53%にまで上昇します。
また、読み込み時間が1秒から10秒に延びると、モバイルユーザの離脱率は123%増加することがわかっています。
最も深刻なデータとして、ページ読み込み時間が1秒遅れるごとに、コンバージョン率が7%低下するという統計があります。
そして、デルタ航空のウェブサイトの読み込み時間は7秒以上でした。

ドキュメント完了時間:遅延がもたらす隠れたコスト

「ドキュメント完了時間」の遅い航空会社トップ10
「ドキュメント完了時間」の遅い航空会社トップ10

デルタ航空は「ドキュメント完了時間」でも遅延が発生していました。
「ドキュメント完了時間」とは、ブラウザがページを機能させるために必要なすべての要素を完全に読み込む時間を指します。
デルタ航空のお客様は予約や変更の手続きを進める際、ページが完全に表示されるまで待たされることになりました。

航空業界では、1分1秒が重要です。
この遅延は、単なる不便ではなく、直接的な予約の減少や収益の損失につながります。

卓越した企業文化の構築:すべての要素が重要である理由

企業が卓越性を追求するには、単に飛行機をA地点からB地点へ運航するだけでなく、業務のあらゆる分野で高い基準を設け、継続的な改善を行うことが求められます。
CrowdStrikeのような障害が発生する前に、そうした取り組みを進めておくことが重要です。
ウェブパフォーマンスは一見、航空業務と無関係に思えるかもしれませんが、今日のデジタル社会においては極めて重要な要素となっています。

一見すると、デルタ航空のデジタル顧客体験の質の低さやページの読み込み速度の遅さは、本業である「乗客を輸送すること」とは無関係に思えるかもしれません。
しかし、ウェブパフォーマンスの低下は単なるサイトの問題ではなく、企業全体の運営に対する警鐘です。
ストレスがかかる状況下では、このような「小さなほころび」が表面化します。
CrowdStrikeの障害が発生した際、デルタ航空の組織としての耐久力が試され、その結果、深刻な影響を受けました。

デルタ航空の脆弱性は避けられなかったのか?

CrowdStrikeの障害はきっかけに過ぎず、サイバーセキュリティやウェブパフォーマンスなどのIT投資不足という「火種」はすでに存在していました。
危機的状況において生き残るのは、事業のあらゆる部分にインターネットレジリエンスを組み込んでいる企業です。
北米およびEMEA地域の300人以上のデジタルリーダーの洞察に基づく初のInternet Resilience Reportによると、事業運営のあらゆる分野でレジリエンスの重要性が中程度から高いレベルで認識されていることが明らかになりました。

デジタル体験の耐障害性を高め、逆境に適応・持続できるようにする必要性を生む要因は何か?
デジタル体験の耐障害性を高め、逆境に適応・持続できるようにする必要性を生む要因は何か?

インターネットレジリエンスは、業務効率の向上や従業員の生産性の最大化、さらにはビジネスリスクの軽減など、企業全体にとって重要な要素です。
航空業界に限らず、今やあらゆる業界がインターネットを主要な企業ネットワークとして依存しています。
デルタ航空の最近の苦境は、ウェブパフォーマンスの積極的な管理がいかに重要であるかを浮き彫りにしました。
Internet Performance Monitoringは不可欠です。
今日の世界では「遅い=停止」と同義であり、企業は今すぐインターネットレジリエンスに投資しなければ、次の障害発生時に大きな損失を被るリスクがあります。

主要航空会社のウェブパフォーマンスと改善策について詳しく知りたい方は、Airline Website Performance Benchmark Report全文をご覧ください。