
Microsoft Office 365 障害からの教訓:サードパーティ監視の重要性
大規模障害で浮き彫りにされたネットワーク監視の重要性
2025年3月6日
著者: Ankit Kumar, Denton Chikura
翻訳: 永 香奈子
この記事は米Catchpoint Systems社のブログ記事「Lessons from Microsoft’s office 365 Outage: The Importance of third-party monitoring」の翻訳です。
Spelldataは、Catchpointの日本代理店です。
この記事は、Catchpoint Systemsの許可を得て、翻訳しています。
あなたのソフトウェアが何百万ものユーザの生産性を支えているとき、信頼こそが究極の通貨となります。
信頼は、透明性、明確なコミュニケーション、そして揺るぎない安定性によって築かれます――特に、障害が発生したときにはなおさらです。
Microsoftは最近、この教訓を学びました。
大規模な障害により、同社の主要サービスであるOutlookとTeamsが停止したのです。
何が起こったのか?
11月25日(月)、Microsoftの生産性ツールであるOutlook、Teams、Exchange、SharePointといったOffice 365スイートの主要コンポーネントが、大規模な障害に見舞われました。
Microsoftは、火曜日の午後3時(EST)直後にOutlookとTeamsの問題をすべて解決したと発表しましたが、ユーザが最初に障害を報告した月曜の朝から24時間以上が経過していました。
影響を受けたヨーロッパ地域の何百万ものユーザにとって、大混乱となりました。
一日の業務を始めようとした企業は、突然の障害に直面しました。
コミュニケーション手段が断たれ、会議は欠席を余儀なくされ、重要なファイルへのアクセスも不可能になりました。
一部のユーザは、不安定なサービスに悩まされました。
メールは届くものの添付ファイルが欠落していたり、メッセージが送受信の途中で止まったりするケースもありました。
そして、完全にアクセスできなくなったユーザもいました。
この混乱は、現代の職場がいかにMicrosoftの生産性ツールに深く依存しているかを浮き彫りにしました。
Microsoftによると、Teamsの月間アクティブユーザ数は3億2000万人にのぼります。
また、Outlookも4億人のユーザにとって、メールやスケジュール管理に欠かせないツールです。
業務時間中にこれらのツールへのアクセスを失うことは、無数の企業のワークフローを麻痺させました。
この影響をさらに悪化させたのは、Microsoftの対応でした。
主な情報発信はX(旧Twitter)への投稿を通じて行われたのです。

現在、Exchange OnlineへのアクセスやMicrosoft Teamsのカレンダー機能を利用しようとしているユーザに影響を与えている問題を調査中です。
詳細については、管理センター内のMO941162をご参照ください。

最近の変更が、影響を引き起こした可能性があることを特定しました。
現在、この変更のロールバックを開始しており、問題を緩和するために必要な追加対応を調査しています。
詳細については、管理センター内のMO941162をご参照ください。
Microsoftの公式ステータスページに詳細情報が掲載されなかったことで、ユーザは不満を募らせました。
問題の内容や根本原因、解決までの具体的な見通しが不明確なままだったのです。
どのように検知されたのか?
障害が発生する中で、Catchpointのユーザは一歩先を行っていました。
これは、当社のインターネット・パフォーマンス・モニタリング(IPM)ツール「Internet Sonar」がリアルタイムで問題を検知したためです。
問題の可視化
- 11月25日 午前3時35分(ET):Internet Sonarがヨーロッパの複数の地域で異常を検知し、HTTP 404および503エラーコードを確認しました。



この障害はInternet Stack Mapによっても確認されました。
マップ上では、CDNやDNSサービスなどの依存関係が正常に動作していることが示されており、障害がMicrosoft Officeに限定されていることが明らかになりました。

当社の顧客にとって、この早期検知は極めて貴重な情報となりました。
Microsoftが公式に問題を認める前に、障害の発生を把握することができたのです。
重要な教訓
Microsoftの障害は、クラウドインフラの複雑さについて重要な示唆を与えています。
このインシデントから学ぶべき主なポイントは以下のとおりです。
1.相互接続された世界では、障害は避けられない
当社の「インターネット・レジリエンス・レポート 2024」では、世界中のデジタルリーダー300名以上に、デジタルおよびインターネットのレジリエンスについてインタビューを行いました。
その中で、サードパーティプロバイダーへの依存について質問したところ、99%の回答者が何らかの形でサードパーティのプラットフォーム技術に依存していると答えました。
さらに、そのうち77%が、デジタルおよびインターネットレジリエンスの成功にとって、これらの技術が「極めて重要」または「非常に重要」であると回答しました。
これらの依存関係を取り除くことはできません。
なぜなら、それらは無数に存在し、密接に絡み合いながら、Webサイトやアプリケーションの動作を支え、システムのセキュリティを維持しているからです。
しかし、AWSのCTOであるWerner Vogels氏が有名な言葉で述べたように、「すべてのものは常に壊れる(Everything fails all the time)」 という現実があります。
この本質的な脆弱性を考慮すると、障害は避けられないものであり、それに備えることが不可欠だと言えます。
この準備の重要な側面は、ITチームの管理範囲を超えたSaaSアプリケーションやAPIの監視です。
APIはデジタル世界の接続組織であり、取引、通信、無数のサービスを支えています。
サービスの舞台裏に隠れるという性質であっても、適切な監視と可観測性について配慮するべきです。
APIの障害は、機能の中断、データの不正確性、機能の喪失、更新の遅延、セキュリティ上の懸念など、ユーザに対して深刻な影響を及ぼす可能性があります。
効果的なAPI監視により、障害の迅速な検出と対応が可能となり、影響を最小限に抑え、エンドユーザ向けのサービスの信頼性を維持できます。
2.ステータスページは、サービスの健全性を示す指標として信頼できないことがよくあります
サービスの障害発生中、Microsoftのステータスページは当初、適時かつ正確な更新が行われていませんでした。
その代わりに、ソーシャルメディアプラットフォーム「X」が主な情報源となりました。
各クラウドプロバイダーは、ステータスページを更新するタイミングを独自の基準で判断しており、意図的にユーザを情報から遮断しているわけではありません。
多くの組織は障害情報を伝える手段としてソーシャルメディアを活用していますが、それには固有のリスクも伴います。
ソーシャルメディアは信頼性に欠けることがあり、ITチームが危機対応時に必要とする詳細な情報を提供するには不十分なことが多いです。
その結果、Microsoftのユーザは問題の詳細や根本原因、解決の見通しが分からず、フラストレーションを抱えることとなりました。
より良い対策:Internet Sonar と Internet Stack Map の活用
障害発生時、当社のユーザはポータル内の 2 つのツールを活用し、サービスの中断に先んじて対応することができました。
それが Internet SonarとInternet Stack Mapです。
- Internet Sonar: 推測を排除する強力なツール
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Internet Sonarは、リアルタイムで独立したインターネットの健全性データを提供し、推測を排除する強力なツールです。
このツールを使用すると、第三者の障害が発生した際に、その発生場所、継続時間、そして自社への影響の可能性を即座に把握できます。
さらに、Internet SonarはSNSで話題になる前にサイトのダウンを検知します。
そのため、責任の押し付け合いや緊急対応会議を避け、シンプルで知的かつ信頼性の高いインターネット健全性情報を基に、業務やユーザー体験に影響を及ぼす第三者の障害に先んじて対応できます。

- Internet Stack Map: デジタルサービスの健全性を一目で把握
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Internet Stack Mapは、自社のデジタルサービスと、それに依存するサービスの健全性をリアルタイムで可視化するツールです。
このツールは第三者サービスの依存関係を自動的に検出し、組織がデジタルエコシステム全体の健全性を直感的に理解できるよう支援します。
例えば、今回のケースのようにMicrosoft Officeの障害が発生した場合、その影響を受けるコンポーネントが明確にハイライト表示されるため、根本原因の特定がスムーズ になります。
危機的な状況下における独立した監視の重要性
インターネットは、複雑に絡み合う相互依存のネットワークです。
好むと好まざるとにかかわらず、私たちはお互いに依存しており、障害の発生は避けられません。
今回のインシデントは、第三者による監視がいかに重要であるかを示しています。
障害発生時、明確で独立した信頼性の高い情報があるかどうかで、対応の差が生まれます。
接続ができない状況でSNSの投稿やステータスページの更新を待つだけでは不十分です。
ユーザとの信頼を維持するためには、リアルタイムで独立したインターネット健全性のインサイトを提供するツールが必要です。
CatchpointポータルのIPMツールを活用すれば、第三者プロバイダーの報告を待つことなく、すでに答えを手にしている状態になります。
Internet Sonarによる、リアルタイムのインターネット障害マップを是非ご覧ください。