
IBMとCatchpointによるリテールデジタルパフォーマンスイベントのまとめ:重要な洞察
遅さは損失、速さは信頼
2025年3月26日
著者: Howard Beader
翻訳: 逆井 晶子
この記事は米Catchpoint Systems社のブログ記事「Retail digital performance event recap: Key insights from IBM & Catchpoint」の翻訳です。
Spelldataは、Catchpointの日本代理店です。
この記事は、Catchpoint Systemsの許可を得て、翻訳しています。
2025年3月19日(水)、IBMとCatchpointが主催する初のリテールデジタルパフォーマンスイベントを開催しました。
セッションでは、スピード、レジリエンス、ユーザー中心の設計に関する実用的で考えさせられる洞察が提供され、スケールに応じたデジタル体験を向上させるための新たな戦略が参加者に共有されました。

イベントの主要なポイント
デジタル体験の改善に向けた考え方を反映した4つの重要なポイントをご紹介します。
- 遅いことはダウンと同じ
- パフォーマンスの低下は、サービスが完全に停止しているのと同様の影響を及ぼす可能性があるため、堅牢な監視と最適化が必要であることを強調しています。
- パフォーマンスは重要
- Webサイト、DNS、アプリケーション、全体的なインターネットスタックを継続的に改善することは、競争の激しい現代市場で優位に立つ鍵となります。
- 協働が鍵
- IBMとCatchpointのパートナーシップは、既存のIT環境にシームレスに統合できる革新的なソリューションを推進しています。
- IPM + APM
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アプリケーションやサイトはますます複雑かつ分散化しており、複数のAPIやサードパーティコンポーネントに依存しています。
ユーザー体験を損なう問題の中には、APMの監視範囲外の「見えない盲点」が存在します。
スピーカーのハイライト
以下は、業界の専門家による注目の発表内容です。
- CatchpointのCMO、Gerardo Dada氏
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クラウド時代において監視を再考し、インターネットパフォーマンスの問題がユーザー体験を妨げないようにすべきであると述べました。
CatchpointのGerardo Dada氏 - IBM NS1のプロダクトマネージャー、Terry Bernstein氏
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スピードの重要性と、適切なDNSベンダーの選定がビジネスパフォーマンスに直接影響することを強調しました。
IBM NS1のTerry Bernstein氏 - IBMのプロダクトマーケティング担当、Ben Ball氏
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本イベントのホストを務め、The Big GameにおいてIBM NS1が再び重要な役割を果たし、デジタル配信チェーンにおける課題にもかかわらず、すべてのストリームでシームレスなパフォーマンスを実現したことを紹介しました。
IBMのBen Ball氏 - Catchpointのエンジニアリング担当副社長、Sergey Katsev氏
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洞察に富んだ共同デモが行われました。
このデモでは、世界最大規模のインテリジェントエージェントネットワークに支えられたCatchpointのSyntheticデータが、IBM NS1 Pulsarをどのように強化するかが紹介されました。
その結果、マイクロリージョナルレベルでのトラフィック誘導が最適化され、ユーザー体験が継続的に向上する仕組みが示されました。
CatchpointのSergey Katsev氏
対談のハイライト
Beyond.comのTim Mohlman氏とCatchpointのCEO兼共同創業者であるMehdi Daoudi氏のセッションは、イベントの中でも特に注目を集めました。
Tim氏は、CatchpointのIPMがすべてのユーザーに対してデジタル体験を最適化するのにどのように役立っているかを共有し、最新のPCや高速なモバイル端末を持たないお客様にも対応することの重要性を強調しました。

以下は、インタビューの編集済み書き起こしです。
- 監視ツールに救われた瞬間とは?
-
Tim Mohlman
数年前、奇妙なDNSの問題がありました。
断続的に遅延が発生し、お客様からは苦情が来ていたのに、ステータスページではすべて「正常」と表示されていたのです。
当時はDyn DNSとAkamaiを使用していましたが、原因を特定できませんでした。そこにCatchpointのエンジニアが介入しました。
Catchpointはカスタムテストを実施し、古いAkamaiのPoPs(配信拠点)に紐づいたCNAMEレコードが原因である「最も深刻なレベル」に相当するDNS障害を特定しました。彼らは、その証拠として決定的なスクリーンショットも提示してくれました。
2日後には問題が解消しました。
この経験を通じて、「監視ツールが人間より後に問題を把握するようでは、その役割を果たしていない」と痛感しました。 - 能動的な監視と“アラート疲れ”のバランスをどう取っていますか?
-
Tim
お客様の視点で監視することが大事です。
単に「サイトが動いているか」だけを確認するのではなく、次のような観点からチェックしています。- ページが真っ白ではないか?
- 広告がコンテンツを邪魔していないか?
- 実際に購入手続きができるか?
私たちは積極的な監視姿勢を取っています。
重大な障害を見逃すくらいなら、あとからアラートを調整する方が良いと考えています。
例えば、eコマースにおける検索、カート、チェックアウト、税計算など、購入までのすべてのステップを監視しています。
お客様の25%が購入を完了できなければ、それは「技術的な問題」ではなく、「収益の緊急事態」なのです。 - サードパーティの障害にはどう対応していますか?
-
Tim
レジリエンスを前提に設計します。
以前、シカゴで光ファイバーが切断されたことがありました。
当社のソルトレイクのデータセンターは正常に稼働していましたが、東海岸での売上は激減しました。
現在は以下のように対応しています。- サーキットブレーカーを活用し、問題が発生した処理を即座に停止させます(例:壊れた商品検索を表示せずにスルーする)。
- データセンターの周囲だけでなく、グローバルに監視する。
- サードパーティにストレステストを実施する。
たとえば、Google Tag Managerがクラッシュしてもお客様が購入できるかを検証する。
完璧を目指すのではなく、「優雅に失敗する」ことが目標です。
- 関係者に監視への投資を納得させるには?
-
Tim
収益と結びつけて説明します。
以前、財務部門から「Akamaiを監視しても、どうせ自分たちで直せないのに、なぜ必要なのか?」と聞かれました。
私はこう答えました。
「もし店舗までの高速道路が封鎖されたら、迂回路を探すか、売上を失うしかないでしょう」。また、Catchpointのダッシュボードを経営陣とも共有しています。
赤いライン(障害の兆候)が収益の低下と一致しているのを見ると、直感的に理解してもらえます。
データは、どんな説明よりも説得力があります。 - 最大の文化的課題は何ですか?
-
Tim
サイロ化です。
以前は各チームが独自に監視ツールを選んでいました—New Relic、Datadog、Catchpointなど。
障害が発生したときに、誰も共通の言語で話せなかったのです。今では、ベンダーに依存しないデータを得るためにOpenTelemetryを推進しています。
最初にベンダーに聞く質問は「OpenTelemetryに準拠していますか?」です。
準拠していなければ、契約しません。
標準化することで、ツール間でデータを相関させ、「自分のダッシュボードでは問題ない」といった争いを避けられます。 - これから始めるチームへのアドバイスは?
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Tim
監視を「カスタマージャーニー」として捉えてください。
私の妻も自社サイトで買い物をします—バグに遭遇すれば夕食時に指摘されます。
単なる稼働確認ではなく、実際のワークフローをテストしましょう。そして、自動化です。
以前、担当者が入院していたために手動レポートが失敗し、訴訟に発展したことがありました。
重要なプロセスは、決して一人に依存すべきではありません。Mehdi
ありがとう、Tim。
最後に一言お願いします。Tim
スピードは機能ではなく、「信頼の基盤」です。
お客様は、サイトが遅ければ、価格が高くても競合他社で購入します。
ネットワーキングディナーと今後の予定
ネットワーキングディナーでは、Box、Costco、Beyond、IBM、Catchpointなどの参加者同士が洞察を共有しながら、食事と交流を楽しみました。
参加者、登壇者、そして主催者の皆様に心より感謝いたします。
今回参加できなかった方も、4月30日にロンドンで開催される次回イベントでお会いできるのを楽しみにしています。