2021年のサイバー5から得られた大きな収穫
売上上位のECサイトがやっている繁忙期のためのWebパフォーマンス対策
2022年2月4日
翻訳: 島田 麻里子
この記事は米Catchpoint Systems社のブログ記事 The Big Takeaways from Cyber 5 2021の翻訳です。
Spelldataは、Catchpointの日本代理店です。
この記事は、Catchpoint Systemsの許可を得て、翻訳しています。
今年のホリデーシーズンにオンラインで買い物をしたのはあなただけではありません。
感謝祭とサイバーマンデーの間の5日間である「サイバー5」は、2021年の11月と12月のEコマース全体の売上の5分の1を占めました。
(全体の支出額は昨年からやや減少しているにも関わらず)
アメリカ人は、ブラックフライデーに89億ドル、サイバーマンデーに107億ドルの買い物をしました。
このように、サイバー5は企業にとって、Webサイトをスムーズに稼働させ、トラフィックの増加に対応するための重要な時期となります。
サイバー5の期間中、上位のECサイトが全体的にどのようなパフォーマンスを見せたのかを知りたい方は、ぜひご一読ください。
2021年 サイバー5 ベンチマークレポート
Catchpointでは過去10年間、ホリデーパフォーマンス監視評価の一環として、サイバー5における世界の主要小売企業のデジタルパフォーマンスを追跡するベンチマークレポートを作成してきました。
最新のレポートでは、アマゾン、アリババ、ウォルマートを取り上げました。
この結果は、エンドユーザに優れた顧客体験を提供しなければならないという、Eコマースおよびオンライン小売業者の継続的なプレッシャーを反映しています。
このプレッシャーが1年で最も忙しい時期より強く感じられるときはありません。
エンドユーザの体験は、コンテンツの配信に関わる全てのサービスプロバイダが経験する旅の全体像を反映していることを忘れてはなりません。
消費者がオンラインで買い物をする場合、彼らはラストワンマイルのローカルISPから移動し、相互に接続された長距離通信事業者の広大な網を渡り歩くことになりますが、ピアリング関係が良好でない場合もあります。
彼らのアクセスはいくつものCDNやDNSプロバイダに渡され、最終的に小売店のWebサイトに到達します。
しかし、彼らのデジタルジャーニーはそれだけではありません。舞台裏やバーチャル空間の見えないところで、消費者が使用するブラウザやアプリは、小売業者のバックエンドサーバ、ネットワーク機器、データベース、データ分析、サードパーティサービスなどとやり取りしています。
― Catchpoint プロフェッショナルサービス担当マネージャー カーティク・スレッシュ氏
Catchpointが主要小売企業32社を対象に実施したベンチマークテストは、米国東部標準時の11月25日午前12時1分から11月29日午後11時59分まで行われました。
このテストでは、選ばれた小売業者のWebサイトのトップページ、商品詳細ページ、および検索結果における重要な取引を測定しました。
テストは5分間隔で行われ、測定値は中央値で計算されました。
Webページのパフォーマンスを観測する全体的な目的は、米国のEコマース企業が1年で最も集中するショッピング期間中のトラフィックの急増にどのように対応したかを比較することです。
重要なパフォーマンス指標の測定
2021年のサイバー5の期間中に測定された指標は以下の通りです。
- DNS
- CatchpointノードがテストのプライマリURLのDNSを解決するのに要した時間。
業界標準は50ミリ秒未満。 - 待ち時間
- 接続が正常に確立され、サーバにリクエストが送信されてから、テストのプライマリURLに対する最初のバイトのレスポンスを受信するまでの時間。
業界標準は100~200ミリ秒未満。 - レスポンス
- リクエストが発行されてから、プライマリ・ホスト・サーバがテストのプライマリURLの最後の1バイトを応答するまでに要した時間。
業界標準は300ミリ秒未満。 - LCP
- LCP(Largest Contentful Paint)は、ページの読込タイムラインにおいて、ページのメインコンテンツが読込された時点を示す、ユーザ中心の重要な指標。
業界標準は 良/2.5秒未満、改善が必要/2.5秒~4秒、粗悪/4秒以上。 - Webページレスポンス
- リクエストが発行されてから、ページ上の最終要素の最後のバイトを受信するまでにかかった時間。 業界標準は3~4秒。
それでは、2021年のサイバー5レポートの内容と、主な調査結果をご紹介します。
サイバーマンデーのパフォーマンスの課題
ほとんどのEコマースおよびデジタル小売業者は、サイバー5に備えて十分な準備をしていましたが、トラフィック量が急増したときには多くの業者が課題を経験しました。
例えば、1年で最も混雑するショッピングの日であるサイバーマンデーの当日、雑貨小売りチェーンのベッド・バス・アンド・ビヨンドはブラックフライデーの前と最中の期間に比べて、コンテンツのレンダリングが500ミリ秒遅くなりました。
ブラックフライデー前の1,352ミリ秒、ブラックフライデー当日の1,423ミリ秒に比べ、サイバーマンデー中におけるベッド・バス・アンド・ビヨンドのLCPは1896ミリ秒となりました。
実際、トイザらス、メイシーズ、ノードストロームなど多くのトップサイトで、サイバーマンデーにウェブページレスポンスの増加が見られました。
ページサイズの問題
一部の企業では、ページサイズがWebパフォーマンスに明らかな違いをもたらしていますが(例えばベッド・バス・アンド・ビヨンドのページサイズはサイバーマンデーに1MB増加しました)、他の企業においてはそれほど問題になっていませんでした。
ベンチマークリストのトップはペプシとアップルで、それぞれのページサイズは1.1MBでした。
しかし、Webページのレスポンス時間には大きな違いがありました。
ペプシはホームページの読み込みに6秒かかったのに対し、アップルは1.5秒以下だったのです。
Webページレスポンスはホストの数に影響される
アップルは毎日1.5秒以内にホームページを読み込み、サイバー5全体のWebページレスポンスでトップになりました。
2位はアマゾンで、アップルとの差は約1.5秒でした。
ホームページの読み込みにかかる時間は、業界標準で3~4秒と記載しました。
この基準を満たし、4秒以内にページを読み込むことができたのは、アップルとアマゾンだけだったのです。
私たちがWebパフォーマンスを観察した他の全ての小売業者は、Webページレスポンス時間が4~9秒でした。
アップルの素晴らしいパフォーマンスには、ページのコンテンツを提供しているホストが3つしかなかったことが大きく影響しているのでしょうか?
データを相関させてみると、ホスト数が多いサイトがサイバー5全体で最も遅いパフォーマンスを示していることから、その可能性が高いと考えられます。
ネットワークの問題がページのレンダリングやUXに影響を与える
以下に示すように、カルバン・クライン社では、5日間にわたってレスポンス時間の問題が断続的に発生しました。
下の画像に見られるように、レスポンスタイムが高い1つの事例に注目すると、DNS解決時間の長さ(3,923ミリ秒)が他のWebメトリクスに波及効果を与えていることがわかります。
これはLCPに影響を与えるもので、ページ上で最大のコンテンツがいつレンダリングされたかを示すものです。
LCPの遅延が4,460ミリ秒(カルバン・クラインのサイバー5期間中の平均値は 1.5~1.6 秒)、DNSの解決時間の長さによりWebページレスポンス時間の遅延(15,227ミリ秒)が発生しました。
ユーザのブランドに対する最初のデジタル体験は、DNSを通じて行われます。
DNSのパフォーマンスを監視することで、問題が発生した時期とその原因を特定し、DNSプロバイダの問題を特定することができます。
検索結果の待ち時間が長いことに悩む大手小売店も
検索結果ページの待ち時間の長さではベッド・バス・アンド・ビヨンドがトップでしたが、それだけではありません。
バスアンドボディーワークス、ナイキ、ギャップの待ち時間は全て600ミリ秒を超えていました。
業界標準は100~200ミリ秒であることを忘れないでください。
オフィス・デポでは、サイバーマンデーに待ち時間が50ミリ秒遅くなりました。
しかし、この日のオフィス・デポの苦境はこれだけではなく、午前11時20分(米国東部標準時)にサイト全体が停止し、午後2時8分まで続きました。
同社は公式に謝罪し、お客様の不満を解消するためにサイバーマンデーのセールを火曜日まで延長することを決定しました。
2022年に向けて ― Eコマースと小売業者にとっての大きな収穫
2022年を迎えるにあたり、オンラインでのビジネスが当たり前になったことを認識する必要があります。
パンデミックは、すでに避けられなかったことを加速させただけです。
オンライン・ショッピング、SaaSツール、リモート・ワークなど、私たちはほとんど全ての行動をインターネットに依存しています。
サイバー5の大きな収穫は、以下の点を強調しています。
準備は王道
オフィス・デポが3時間近いダウンタイムを記録したにもかかわらず、前年と比較して2021年のサイバー5全体では大規模な障害は少なかったのです。
2020年はセールスフォースからフェイスブックまで、大規模な障害が多発していましたが、なぜ今年は少なかったのでしょう?
おそらく多くのネットワーク事業者は、ホリデーシーズン前にサイトのメンテナンスを確実に行い、すでに保守作業が行われていたため、障害の発生が少なかったものと思われます。
「遅延は新たなダウンタイム」という言葉にあるように、Webパフォーマンスに関しては、多くの小売業者が「待ち時間」「LCP」「Webページのレスポンス」といった重要な指標の改善に力を入れているようです。
デジタル関連企業では、読込時間が2秒遅れるだけで顧客を失ってしまうという調査結果もあり、これは非常に重要な取り組みだと言えます。
Webパフォーマンスとビジネスインパクトの本質的な関係についてのCore Web Vitalsの調査をご覧ください。
開発者がウェブのパフォーマンスを向上させるために行った作業は、1年で最も忙しい時期に強力な効果を発揮します。
今年の最大の勝利者の一人はアップルで、これまで見てきたように、彼らは中核的な指標に力を入れていました。
最適化は一貫して行う必要がある
競争力を維持することはもちろん、稼働し続けるためには、常にサイトの最適化を行う必要があり、そのためには最適なパフォーマンスが必要です。
ここでは、戦略の一環として検討すべき最適化のヒント、特に高負荷になるの時期に備えるためのヒントを紹介します。
全体的な最適化
真のエンドユーザの視点を理解するには、全体的なアプローチが重要です。
エンドユーザ体験監視では、1つのアプリケーションを動かすのに必要な複雑さを考慮しています。
配信チェーン内の全てのコンポーネントをマッピング
お客様にサービスを提供する上で、どのようなサードパーティベンダーが関わっているのかを理解することに時間をかけてください。
CDNからユーザのブラウザまで、ファイアウォールの向こう側でホストされている全てのミッションクリティカルなサービスを監視する必要があります。
通信量の多い時間帯に平均値を使わない
平均値では、地域によってサービスが大幅に低下するテールエンドのユーザのパフォーマンスを十分に把握することができません。
代わりにパーセンタイルの中央値を使用して、パフォーマンスをより正確に表示し、全てのユーザの問題を検出します。
年間を通してのオブザーバビリティが必要
ホリデーショッピングの時期がますます広がっていることを考えると、パフォーマンス管理には1年間の先を見越したオブザーバビリティが必要になってきます。
遅延を減らし、障害を防ぐためにできる最も重要なことの1つは、強固なオブザーバビリティ戦略を導入することです。
積極的なオブザーバビリティテストを実施し、モバイルやデスクトップといった異なる種類の機器に対する極端な負荷の上昇を可能な限り再現するのです。
これらのテストにより、パフォーマンスベンチマーク、ベースライン、ネットワークトラフィックの流れを把握することができます。
このような情報が得られれば、例えば、トラフィック負荷の急増が予想される場合には事前にサーバにその負荷を分散させるなど、適切な準備を行うことができます。
そして最後に……サイバー5は死んだのか?
2021年のサイバー5は多くの小売業者にとって莫大な利益をもたらしましたが、例年よりも早くこの期間が始まったことは周知の事実です。
アドビ・デジタル・インサイツのディレクターであるテイラー・シュライナー氏は、10月の早い段階でセールが始まったことで、消費者はサイバーマンデーやブラックフライデーのような大規模なショッピングデーでの割引を待つことなく、ショッピングを楽しむことができた
と述べています。
オンラインショッピングに慣れてきたこともあり、ホリデーシーズンはさらに広がっていきます。
2022年のeコマースホリデーカレンダーをチェックして、今後の需要に対応するためにインフラを拡張する必要がある時期を確認しましょう。