ソースからエッジまで:無視できない6つのエージェントタイプ
2025年4月7日
著者:
Gael Hernandez
翻訳: 逆井 晶子
この記事は米Catchpoint Systems社のブログ記事「From the source to the edge: the six agent types you can’t ignore」の翻訳です。
Spelldataは、Catchpointの日本代理店です。
この記事は、Catchpoint Systemsの許可を得て、翻訳しています。
最近、Catchpointはグローバルエージェントネットワークを3,000以上に拡張しました。
この分野が激しい競争にさらされる中、これは当社の大きな強みの一つとなっています。
執筆時点で、105か国・346都市に395のプロバイダーを展開しているのはCatchpointだけです。
ISP戦略ディレクターとして、私が強調したいのは「なぜそこまでするのか?」という点です。
なぜ、あえて中国、ロシア、アフリカ諸国といったアクセスが難しい地域にまでバックボーンエージェントを展開し、これほど大規模で独立性の高いネットワークを構築しているのか?
その答えは、インターネットの構造にあります。
インターネットは単一の巨大ネットワークではなく、ISP、データセンター、バックボーン、無線キャリアなど、数千の独立したネットワークがピアリングやトランジット契約で繋がった「パッチワークキルト」のようなものです。
正確にパフォーマンスを監視するには、このキルトのすべての層、すなわち私たちがインターネットスタックと呼ぶものに対する可視性が必要です。
この記事では、Catchpointが提供する5つの合成エージェント(バックボーン、無線、ラストマイル、クラウド、BGP)について、それぞれがどのように役立つのかを解説します。
まずは、インターネットのエンドツーエンドの接続構造を確認してみましょう。
複数の観測点が重要な理由
インターネットは単一のシステムではなく、ISP、データセンター、無線キャリアなど数万の独立したネットワークが、ピアリングやトランジット契約によって結びついた集合体です。
そのため、1か所を監視するだけでは全体像を把握することはできません。
ピアリング契約では、2つのネットワークがトラフィックを無償で直接交換します。
トランジット契約では、あるネットワークが他のネットワークに料金を支払い、自分のトラフィックをさらに先のネットワークへ運んでもらいます。
ピアリングは通信をローカルにとどめ、トランジットはより広域に届ける仕組みです。
各ネットワークはピアリングやトランジットの方針を独自に決定するため、どこで何が起きているのかを把握するには、複数の地点に監視エージェントが必要です。
あるISPのピアリング拠点で発生したパフォーマンスの不具合は、別のISPからは見えない可能性があります。
そのためCatchpointでは、インターネット全体の一部にしか影響しない問題も見逃さないよう、重要なネットワークに多数のエージェントを配置しています。
ティアが重要な理由
これらのピアリングやトランジット契約の性質により、ネットワークはティア(階層)に分類されます。
- Tier 1
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Tier 1は、互いにピアリングを行い、インターネット上のどの地点にも到達するために一切トランジットを購入する必要がない非常に大規模なネットワークです。
通常、長距離のインターネットトラフィックを運ぶため、インターネットのバックボーンと見なされています。
このグループに属するネットワークはインターネットの黎明期から多少の変化はあるものの、比較的安定しており、Lumen、AT&T、Cogent、Verizon、Orange、GTT、NTT、Telxiusなどが含まれます。
このカテゴリには、長年にわたり自国市場でサービスを提供してきた非常に大規模な従来型の通信事業者が分類されます。 - Tier 2
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Tier 2は、ピアリングもトランジットの購入も行う地域規模のプロバイダーです。
業務規模や提供するサービスの種類(IPトランジット、イーサネット、あるいは未使用の光ファイバー回線(ダークファイバー)を使った専用回線サービス)によって、ピアリング接続の数やトランジットプロバイダーの数が決まります。
1つ以上のインターネットエクスチェンジポイントでピアリングを行い、2つ以上のアップストリームプロバイダーと接続しているネットワークの多くは、このカテゴリに分類されます。 - Tier 3
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Tier 3は、上位プロバイダーに接続されたより小規模でローカルなISPです(多くはシングルホーム接続)。
このレイヤーでは、住宅用や地域限定のネットワーク上でのエンドユーザの体感が反映されます。
各ティアにエージェントを配置することが重要なのは、Tier 1ネットワークは、Tier 2(地域プロバイダー)やTier 3(ローカルISP)と比べて、全体的または部分的な障害、バックボーンの輻輳など、グローバルなイベントに対する可視性が高いためです。
一方で、特定の地理的エリアに限定された一部のプロバイダーにのみ影響するようなローカルな障害は、影響を受けたネットワークの中から見なければ把握することが困難です。
なぜシングルホームのTier 1/Tier 2接続が重要なのか
ネットワークがどのようにティアに分類されるかを理解したところで、それがエージェントの接続方法にどのように影響するのかを見ていきましょう。
多くのデータセンター、ホスティング事業者、マネージドサービスプロバイダーは、複数の上位ISP(Tier 1およびTier 2)を利用して、インターネットへの単一かつ集約された接続を構築しています。
このようなインターネット接続は、通常、複数の上位ISPを組み合わせた形で提供され、「マルチホーム接続」あるいは「統合型インターネット接続」として知られています。
マルチホーム接続は、1つのISPが障害を起こしたりパケットロスや輻輳を起こした場合でも、トラフィックを他の経路に迂回させることで冗長性を高める手法です。
また、地域によっては、より反応の速い通信経路を提供するISPもあり、結果としてパフォーマンスの向上につながります。
しかし、Internet Performance Monitoring(IPM)においては、シングルホームではなくマルチホーム接続のエージェントを使用すると、監視データに変動が生じやすくなり、パフォーマンスに影響する問題の特定やトラブルシューティングが困難になります。
Catchpointのバックボーンエージェントの96%以上が、「統合型インターネット接続」ではなく、あえてシングルホームのTier 1/Tier 2接続を採用している理由は以下の通りです。
- 経路の一貫性
- 一貫したTier 1アップストリーム経路により変動が減り、異常や劣化の検出と原因特定が容易になります。
- バックボーンの可視性
- Tier 1の可視性は、ルーティング異常、BGPハイジャック、バックボーンの輻輳など、インターネットのコアの動作を観測するうえで不可欠です。
- パフォーマンスの安定性
- 統合型インターネット接続では、ロードバランシングや価格戦略(例:BGPベースのトラフィックエンジニアリング)によって経路が動的に変更されるため、測定結果に影響が生じやすくなります。
CatchpointがなぜシングルホームのTier 1/Tier 2接続を選ぶのかをご理解いただけたところで、次は6つの合成エージェントタイプそれぞれについて見ていきましょう。
それらをどこに配置しているのか、どのように構築しているのか、そして何より、それぞれがどのような可視性を提供するのかをご紹介します。
バックボーンエージェント
バックボーンエージェントは、「インターネットの中核」からの視点を提供し、他のエージェントでは見えないグローバルな障害、BGPハイジャック、CDNレベルの問題を検知します。
これらのエージェントは、世界中のTier 1またはTier 2 ISPに設置されており、以下の基準でキャリアを選定しています。
- 地理的要素および市場での重要性(グローバルな接続拠点)
- CAIDAのASRankやAPNICのeyeballデータ(最も相互接続されたネットワークをカバー)
各バックボーンエージェントは、専用のIPトランジット接続を備え、特定の通信事業者に依存しない中立的なデータセンター内にサーバークラスタとして設置されています。
中立的なデータセンターに設置することで、複数の国際・国内キャリアと柔軟に接続(クロスコネクト)できるほか、同一施設内での運用によりコロケーションコストも抑えられます。
アフリカや中国などの新興市場では、中立的なデータセンターが不足しているため、やむを得ず特定キャリアが運営する施設に設置するケースもあります。
バックボーンエージェントでのパフォーマンスと可用性の測定が特に重要なユースケース
- XLO(Experience Level Objective)測定
- 送信元と宛先が同一ISPにある場合のサービス性能を検証
- CDNパフォーマンス検証
- バックボーン経由での高速かつ安定したコンテンツ配信の確認
- 競合ベンチマーク
- 同一Tier 1/2ネットワーク内での自社サービスと競合の比較
- ピアリング/ISPモニタリング
- ルート変更、BGP異常、予期しないトランジット動作の検知
- 地域別DNS検証
- 中核ネットワークからのDNS解決速度と正確性の確認
パブリッククラウドエージェント
クラウドエージェントは、パブリッククラウドのデータセンター内からの可視性を提供するため、ユーザに影響が出る前にクラウド特有の問題を検知できます。
Catchpointは、AWS、Azure、Google、Oracle、Alibaba、Tencent、Akamai Compute、OVHの各主要クラウドプロバイダーのすべての主要な可用性リージョンに280以上のクラウドエージェントを展開しています。
クラウドにアプリケーションをホストしている場合や、クラウドプロバイダーのコンピューティングサービスを利用している場合、クラウドエージェントを通じたパフォーマンスと可用性の測定は不可欠です。
クラウドエージェントは、SREチームがパブリッククラウド上でのパフォーマンス低下を事前に検知し、ユーザ体験に影響が出る前に対処することを可能にします。
無線エージェント
無線エージェントは、現実のセルラー通信環境をシミュレートし、3G/4G/5Gネットワーク上でアプリケーションが実際にどのように動作するかを正確に把握できます。
Catchpointは、AWS Wavelengthや独立系キャリアを活用し、米国、カナダ、日本、ドイツ、韓国、インド、英国に無線エージェントを設置しています(例:Verizon、KDDI、BT、T-Mobile 5G、AT&T 5G)。
バックボーンテストと並行して無線テストを実行することで、モバイル環境での体感とコアネットワーク上の性能を比較でき、パケットロスやDNSの遅延など、モバイルユーザのみに影響する問題を特定することが可能です。
ラストマイルエージェント
ラストマイルエージェントは、実際の家庭内に設置されており、ブロードバンド接続におけるエンドユーザ視点のパフォーマンスを提供します。
ラストマイルエージェントは、小型の宅内設置型デバイスとして動作し、住宅用ISPに直接接続されます。
通信速度制限、DNS障害、地域的なネットワーク障害など、ISP特有の問題を特定するために有効です。
エンタープライズエージェント
エンタープライズエージェントは、支社、データセンター、エッジ拠点など、社内ネットワーク全体にわたる可視性を提供します。
これらのエージェントは、組織のインフラストラクチャ内に設置されます。
対象には、オフィスネットワーク、プライベートデータセンター、小売店舗、エッジデバイスなどが含まれます。
これにより、社内アプリケーション、API、各種サービスのパフォーマンスを、外部トラフィックと同じレベルの粒度で監視することが可能です。
グローバルエージェントネットワークと組み合わせることで、外部からの視点と内部からの視点の両方が揃い、全体像を把握できます。
BGPエージェント
BGPエージェントは、リアルタイムのルーティングテーブルを監視し、BGPハイジャックや、本来共有すべきでない経路情報の誤拡散(いわゆるルートリーク)、意図しない経路変更など、サービスを脅かす異常を検知します。
Catchpointは、1,700以上のBGPエージェントからリアルタイムのルーティングデータを収集・処理するためのルート監視基盤を維持しており、BGPの動作を常時モニタリングしています。
さらに、RIPE RISやRouteViewsといった公開データセットに加え、Catchpointは独自にプライベートな収集基盤も運用しており、100の異なるネットワークに属する330以上のBGPエージェントからデータ提供を受けています。
また、BGPセッションをプライベートコレクターと共有することで、ルーティング異常が自社のネットワークに与える影響を、ポータル上でより詳細に把握することができます。
まとめ
「なぜ、105か国346都市にわたって3,000以上のエージェントを展開しているのか?」という問いに対する答えはシンプルです。
今日のインターネットは、ひとつの巨大なクラウドではなく、無数の独立したネットワークが縫い合わさって構成されたパッチワークのような存在だからです。
インターネットスタックのあらゆる層にエージェントを分散配置することで、問題が発生した瞬間に、それがどこで起きているのかを即座に特定できます。
たとえば、遠隔地のバックボーンでのルーティング変更、クラウドリージョンでの微細な遅延、あるいは数件の家庭回線だけに影響するISPの不具合など、いずれも迅速に把握できます。
この広範な可視性は、単なる「カバレッジの誇示」ではありません。
本当に重要なのは、何か問題が起きたその瞬間に、どこで何が起きているかをすぐに特定できることです。
だからこそ、Catchpointはこれほど多様で分散したネットワークを構築し、維持し続けているのです。
それは技術力を誇るためではなく、深夜3時の緊急対応や突発的な障害会議を回避し、どこからアクセスするユーザにも安定した体験を届けるために他なりません。
観測性の可能性を最大限に引き出したい方へ
Catchpointのインテリジェントエージェントネットワークと、それが監視戦略をどのように変革するかについて詳しくはこちらをご覧ください。 https://www.catchpoint.com/global-observability-network